動的配分計算のベース
動的配分の原則はフローチャートにまとめられています (動的配分のフロー図)。
クイックスタートには、Vissimネットワークのモデリング後、動的配分を行うために必要な、最も重要な手順と設定が記載されています (動的配分のクイックスタートガイド)。
動的配分は、繰り返されるシミュレーションに基づいてVissim内で計算されます。ここでは、モデリングされた道路ネットワークが1回だけではなく繰り返しシミュレーションされます。それに従い、運転手は以前のシミュレーションからの経験に基づいてネットワークの経路を選択します。この「学習プロセス」のモデリングは、次のサブタスクから成ります。
- Vissimは、出発地から目的地までの経路の検索において、ベストの経路を選択しない運転手もいるという点を考慮に入れます。一部の運転手は、望ましくない経路を使用することになります。つまり、それぞれの出発地-目的地関係としては、ベストな経路だけでなく一連の経路を把握しておく必要があります。k個のベストな経路が使用されるのが理想的です。交通配分にとって有効と考えられる、この数量を直接計算するための効率的な方法が存在しないため、Vissimでは次のアプローチが使用されます。
各回のシミュレーションにおいて、個別にベストな経路が計算されます。交通の条件は反復ごとに変化するため、最適な経路が複数見つかることになります。一連の反復の中で、運転手の選択肢となりうるさまざまな経路の数と既知の経路のアーカイブが増加していきます (経路検索と経路選択)。
- 運転手が選択のベースとする、見つかった経路に対する評価を計算する必要があります。Vissimでは、いわゆる標準化されたコストが経路に対して計算されます。ここでは、旅行時間、旅行距離およびその他のコスト(通行料金など)が計算されています。旅行距離とコストは、ネットワークモデル内で直接定義されますが、旅行時間は、シミュレーションを実行しなければ決定することができません。したがって、旅行時間は、Vissimでのシミュレーション実行中にネットワークの個々の部分において測定されることになり、その後のシミュレーションにおける経路選択で考慮されるようになります。
- 一連の経路候補からの経路の選択は、離散決定問題(離散選択問題)の特殊なケースです。一連の経路とその標準化されたコストから、経路を選択する運転手のパーセンテージが計算されます。このタイプの選択を表す目的で、現在のところ最も一般的に使用されている数学関数は、ロジット関数です。また、Vissimは経路選択にもロジットモデルのバリエーションを使用しています (経路検索の使用/非使用の経路選択の方法)。
Vissimでは細部にわたって道路ネットワークがモデリングされ、高い時間分解能と空間分解能で、できる限り精度の高い交通流の再現が提供されます。ただし、この詳細なモデリングは、必ずしも上記の3つのサブタスクのいずれにとっても必要なわけではありません。たとえば、都市を通る経路を選択する決定は、車両が走行する車線、あるいは経路上の交差点が実際にどのように見えるかといった点に依存しません。配分の場合は、道路ネットワークの抽象的な説明を参照するだけで十分です。ここでは、交差点はノードであり、交差点の間のリンクは、抽象ネットワークグラフのエッジとなります。この抽象ネットワークグラフ上では、配分手順がより効率的に動作することができます。抽象ネットワークグラフは、人の理解力とも相関性があります。たとえば、経路を誰かに説明するには、交差点の順序を伝え、そこで曲がる必要があるかどうかを付け加えるだけで十分であり、詳細な説明は不要です。
Vissimでは、動的配分のために抽象ネットワークが構築されます。これを実行するには、詳細なモデルの中で、[node]-[ノード] タイプのネットワークオブジェクトを描くことによって抽象ノードとして使用する経路をハイライト表示します。マイクロシミュレーションでの動的配分の場合は、これらは通常、実際の交差点に対応するネットワークセクションとなります (抽象ネットワークグラフの構築)。
シミュレーションは、実行回数ごとにネットワーク内の混雑や旅行時間に大幅な変化がなくなるまで繰り返されます。この状況を、Vissimでは「収束(Convergence)」と呼びます。収束の基準を設定することができます (収束達成に関する属性)。